旅館について
日本には様々な宿泊施設のタイプ(ホテル・旅館・民宿・ペンション・宿坊など)があります。自宅を建てるならばホテル風な住宅にしたいと決めている人もいますし、中でも人気になっているのは「旅館」です。では、旅館とはそもそもどんな宿泊施設なのでしょうか。このWebサイトでは、江戸時代に「旅籠」や「湯治宿」などの呼び名で親しまれていた時代から脈々と受け継がれている「和風の宿」、すなわち旅館を詳しく紹介いたします。ここでは、特に旅館の特長・料金について・予約のコツなど【初心者が知っておきたい旅館の基礎知識】をご案内いたします。
旅館とは
「旅館」とは、宿泊する代金をもらうことで人が泊まることを目的とした事業を運営するために建てられた施設であり、かつ和風の建築様式を取り入れた宿泊施設です。通常であれば、和式の建築構造、または設備を主とする宿泊施設のことを総称した呼び方で旅館と呼びます。
旅館の数
日本には約40,000軒あるといわれています。(※統計データは2016年度時点の厚生労働省の旅館・ホテルの営業施設数調べによるものです。)なお、全国の「延べ宿泊者数」を都道府県別にみると、2016年で最も延べ宿泊者した人数が多かったのは、東京都でした。次に北海道、大阪府、千葉県、静岡県、沖縄県で並んでいます。この統計データを見る限り、大都市や著名な観光スポットがある都道府県が上位を占めているようです。
旅館の特長
旅館の特長とはどういったものがあるのでしょうか?特徴的なものを列挙しておきましょう。旅館の主な特徴は、大きくわけて3つあります。
ホテルに泊まっているように、いわゆる靴のままそのまま部屋に入る、バスとトイレが一緒。といったようなスタイルではなく、泊まっている宿では「玄関や部屋の玄関では靴を脱いで、旅館の中はスリッパや足袋で滞在」「いつでも浴衣を着て過ごせる」「バスとトイレは別。泊っている人が共同で使う大浴場がある」といった、日本の独特の滞在スタイルが特徴です。
逆に、上記でも書かれてある「靴を脱ぐ」、「どこでも浴衣」、「共同の浴場」の3要素があれば、少なくともその宿泊施設は、「旅館」と呼ぶことができます。それでは、次からその3要素について詳しく解説していきましょう。
靴を脱いでスリッパや足袋で旅館の中を散策
特徴の一つ目は、「部屋の玄関や宿の玄関で靴を脱ぎ、スリッパや足袋で旅館の中を歩き回る」ことができる点です。ホテルなどの場合は、部屋に入るときは靴を履いたまま入る、といったことは一般的なのですが、旅館の場合は原則的に土足を禁止にしている宿泊施設になります。
これは世界共通の文化ではなく、日本人の古くから脈々と受け継がれている独自の思想と風習からによるものと考えてよいでしょう。
日本人のこれまでの住まいの歴史を紐解いてみると、日本人の住居は横穴式住居から竪穴式住居へ、そして高床式住居へと変わっていきました。高床式の建物は風通しがよく、最初のうちは倉庫として利用されていました。そこに人が暮らすようになったのは、敷物や座布団、畳など床に敷くものができてからだと言われています。平安時代の絵巻物には、貴族たちは床のある家に住んでいたことが確認されており、その時代から履物は脱いで暮らしているようなので、既に家で靴を脱ぐ習慣が生まれて、その文化が現代までに根強く残っていったのでしょう。
日本は古くから高温多湿な気候の国で、縁の下にある程度高さを作らなければ床が湿気てしまうので、自然な流れで外と家の中には段差ができたとされています。この段差があるがゆえに「家に上がる」という表現もされています。この「上がる」こそが、靴を脱ぐ理由の一つでもあるのでしょう。
家の中は一段高く、古き時代の人にとって大切な場所だと考えられてきました。そこに「上げ」て、招き入れられるのは特別な人だけであるし、大切な場所に土足で入る行為は失礼にあたるのだという文化が生まれてきました。
共同で入る浴場
特徴の二つ目は、基本的に同じ旅館に泊まっている人たち同士で同じ浴場を使うことができる点です。ヨーロッパやアメリカなどの海外のホテルなどで多い、バストトイレが一緒になっている、いわゆるユニットバスになっている、といったスタイルが少なくないのですが、旅館の場合は、屋外にある露天風呂、あるいは室内大浴場を備えている場合が多く、そこで宿泊している人が共同で使います。
そこでは、それぞれの人が背中を洗う。体と髪などを洗う。湯船につかり思い思いに語り合う。景色を眺めながら自分の思いと考えをただ張り巡らす、などさまざまな思い思いの過ごし方をする場が浴場になります。
この浴場の考え方自体も日本独自の歴史にもとづいた慣習だといわれています。
お風呂の歴史はだいぶ歴史をさかのぼり、6世紀から伝えられたといわれています。この時代から単に体を洗うだけではなく、健康や福を得るためのものという考え方は、お風呂好きな私たち日本人に現代も受け継がれていると言えるでしょう。
仏教の教えでは、汚れを落とすことは仏に仕える者の大切な仕事と沐浴の功徳を説いたと言われており、多くの寺院で浴堂も併設しており、施浴が行われていたと言われています。
入浴は七病を取り除き七福を得るという教えもあり、寺院へ参詣する客を入浴させたとも言われています。そうした考え方が評判を呼び、一部の人は入浴を目的としてお寺へ行った人もいたかもしれませんね。
しかし、こうした入浴に対してポジティブにとらえているのは日本独自の文化とも言えるかもしれません。
世界的にほとんどの地域にとっても、また、私たち人類の歴史の大部分においても、入浴とは集団行動の一つでした。
古代アジアでは入浴という行為は、魂と肉体を浄化し、医学的な利益をもたらすと信じられているとされる宗教的儀式の一つでした。
また、ローマ人にとってはコミュニティセンターであり、食事を取ったり運動や読書をする場所、政治を議論する場所として役立っていたとされており、一方でギリシア人にとっての浴場という場所は自己表現、歌、踊り、スポーツに関連しているとされていました。
しかしながら、共同の大浴場は現代の世界ではまれな存在になってしまっています。未だに共同浴場が社会の重要な役割を担っている国はいくつか残っています、例えば日本、スウェーデン、トルコなどがそうです。ですが世界の大都市、特にアングロスフィアではその文化は事実上滅んでしまいました。
※アングロスフィアとは、同じ価値観や文化を形成している英語圏諸国を総称した呼び方です。主に米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどがそうです。
特にロンドン、ニューヨーク、シドニーの人々は自宅で、1人で、1人が入れる小ぶりのバスタブや1人用のシャワー室で身体を洗うことが当たり前の文化になっています。
しかし、これまで世界的にシリアスな面ももっていた共同浴場ですが、いまとなっては共同入浴の文化の認識が転換期を迎えようとしています。一部の人々が小さな儀式主義的社会から 個人を繋ぐネットワークの弱まった巨大な大都市へと脚光を浴びてくるようになってきており、こうした変化は世界的なものです。
この転換期を押し上げたとされている背景としては、現代の関心事とされている人々の孤独感、うつ病、社会的不安障害、他人への無関心がまん延などの新しい心理現象によって、そうした問題を解決になるような手段として共同の浴場も見る目が変わり始めてきました。
共同の浴場は心と身体をきれいにすると同時に、リフレッシュさせる空間を提供することはもちろんだが、一番重要なことは集団レベルで実用性のある社会的交流をもたらしてくれることだ。日本人はこれを「裸の付き合い」や「スキンシップ」と呼んでいます。
これは単純な仕組みによって私たちはこのように感じられることができます。物理的に同じ空間に他の人と居合わせるということは、私たち自身、そして私たちの周りの人たちは、言葉では表すことができない感覚として、生物学的な同じ人種だと認識させることでこのような現象を引き起こすのです。
どこでも浴衣姿
旅館の中の自分の部屋に入ると、必ずと言っていいほど部屋に浴衣がきちんと準備されていることが多いです。部屋に浴衣がない、あるいは浴衣のサイズが合わないとなった場合は、旅館の受付カウンターで取り換えてもらえることが多いです。
基本的に、旅館には温泉がありますし、部屋の中もリラックスできる材質と内装になっているため、日々の仕事やプライベートを忘れる、癒されるためにゆっくりくつろぎやすい多くのポイントがあります。浴衣を着るという行為自体もその目的の一貫としての意味合いが強く、寝間着だけ使う、とかお風呂上りに使う、とかそういった特別な時間に着替えるわけではなく、部屋に入ってすぐにそのまま浴衣に着替えて、一日中浴衣姿のままで過ごすということも、旅館の中では特にめずらしいことではありません。
旅館では部屋に入るとすでに浴衣が用意されており、持ってきた荷物をある程度整理して、落ち着いてきたら浴衣に着替えてゆっくりくつろぐ人も多いと思います。
特に、はるばる遠いところから旅館まで長時間かけて移動してきたという方の場合は、その分の疲れとストレスが半端なくたまっているのではと思います。
誤解のないようにして欲しいのですが、浴衣を着るタイミングというのは、温泉に行って、入浴して、体をふいて、そのあとに浴衣に着替えるのが常識だと思っていらっしゃる方も少なくないのですが、実際は、浴衣を着るべきタイミングなどは特にありません。
人によっては、寝間着として寝る数時間前に着替えを済ませておいて、快眠に備えてあれこれやる、という方も中にはいますし、浴衣とは別に自前のパジャマを持ってきてこれを着ないと寝つけることができない、といった方もいらっしゃります。浴衣の使い方も人それぞれですからね。
それでも、浴衣は旅館でリラックスした環境づくりの要素として、また、くつろぐための服や寝間着としての役割としても、どちらの役割もあるので好きな時に着るのが一番心身的にも良さそうですね。
基本的には、旅館に滞在している間は、ずっと、旅館の中はどこでも、いつでも浴衣ですごせるという、癒しを求めている悩める現代人の子羊にとって最高のリラックスソウルアイテムとして使うことこそが、浴衣の特徴でもあり、本質的な使い方になります。
余談になりますが、そんな浴衣を一枚だけ着るよりも、上着など羽織れるものを着ておくとよいでしょう。
旅館の上手に予約する方法
旅館は、当日いきなり飛び込んでお願いしたとしても泊まれないことがあります。その理由は、食事の用意がすぐにできないからです。そのため、可能な限り、事前に予約しておくことをお勧めします。
事前に予約する方法は、単純・簡単なインターネットからの宿泊予約サイトを使うのが便利です。それぞれお使いの端末、インターネットをつないで使える状態のデスクトップパソコン、ノートパソコン、スマートフォンなどから宿泊を予約しようとしている旅館のホームページ、旅行会社・宿泊予約サイトをアクセスすることで予約することができます。
どの方法が一番お得?
「どの方法が一番お得ですか」と訊かれることもあるのですが、内容が同じであれば、どこから予約しても基本的に大差はありません。
ただし、旅行会社のサイトや宿泊予約サイトでは、そこで予約することでしかできないメリットがいくつかあります。たとえば、事例を並べてみますと、他サイトでは紹介していないそのサイト独自のお得な「宿泊プラン」、ポイント付与・還元による割引価格での購入、プロモーションがある時もあります。
まずは「旅館の公式ホームページ」を確認してみて、次に旅行会社・宿泊予約サイトをチェックしてみたほうがよいでしょう。宿泊予約サイトを比較してみたいときは、いくつかありますが4トラベルなどが便利です。
また、通常の予約とは変わったアレンジをしたい場合や少し相談がしたいとき、たとえば、同じグループで2室以上使いたい場合、いろいろ聞ける電話での予約がよりダイレクトに聞きやすいです。
旅館の宿泊料金
また、旅館には様々な種類の客室があり、料理内容も選んだプランによって変わってくるので、価格を重視したいのか、内容を重視するのか、なにが目的かははっきりさせておくことが必要です。
旅館の宿泊料金に食事が入っているのが一般的
一般的に、旅館の宿泊料金は「一泊二食付き」になっています。宿泊料金の内訳は、旅館によって異なりますが、半分が食事の代金、約半分が部屋の代金といったところが多いようです。
最近では、夕食が付かない宿泊タイプ、素泊まりや片泊まり(一泊して朝食付き)などバリエーションが少しずつ増えていますが、旅館の場合は料亭を一軒持つのと同じ調理場のコストがかかる旅館では、どうしても他のホテルなどの宿泊施設に比べると割高になる傾向はあるようです。
しかし、同じ料理を料亭で食べると数千円かかることに対して、旅館も同じ程度の額の料金だと考えて比べると、案外安いとも言えます。
宿泊料金は泊まる人数によって変わる
これはあまりよく知られてないことなのですが、宿泊料金は、まず「一室当りに泊まる人数」によって変わります。たとえば、「2名一室のとき」「3名一室のとき」では一人当たり払うべき宿泊料金が変わります。また多くの人数で同じ部屋に泊まることができれば、その分一人当たりの宿泊料金が少し安くなります。
なぜ安くなるのかというと、これは和室の持つ特性によるもので、定員(通常4~5人)まで入る部屋を人数に割り当ていて、割引計算しているために起こるものです。ちなみに、旅館の宿泊料金は、一般的には「一人当たり」で表示されていることが多いです。
宿泊料金の変動
季節や曜日によって繁閑がある地区や旅館の場合、泊まる日によって宿泊料金がかなり変わります。お得に泊まれる時期は、一般的にオフシーズンと呼ばれている「平日(特に月~木曜日)」です。
宿泊料金の変動要因
ここで注意する必要があるのが、宿泊する客にはその情報を公開していませんが、旅館側が定めている「料金ランク」があることです。「料金ランク」とは、部屋の種類 × 夕食料理の種類・場所の組み合わせにより、何種類(多い時には、何十種類、何百種類)ものをベースにして、各料金のランクを決めていくわけです。
それが、季節・曜日・部屋のグレード・その部屋に泊まる人数によって変わっていくわけですから、非常に複雑な仕組みで料金を決めていることは理解いただけるかと思います。そのほんの一部の組み合わせが、「宿泊プラン」として大々的に各Webサイト・メディアに紹介されています。
そのため、あまり「できるかぎり安く、調べまくって安く」ばかりを求めてしまうと、部屋が薄汚かったり、狭くなり、ぼろかったり、料理は思っていたほどおいしくなかったりするということにもなりかねないので、「なぜ安くなっているのか」をこれまで説明したことをよく頭で考えながら予約するといいでしょう。
こうした複雑な計算式によって旅館独自で定めている料金ランクですが、じつは観光省の有識者会議でもたびたび指摘されています。この辺はいい加減にグローバル化して、外国人旅行者によりそった親切な方式で進めていきたいところですよね。
宿泊する際の子ども料金
子連れの場合は、子ども料金というものがあります。子ども料金には、一般的に「A・B・C」があり、Aは大人並みのグレードの料理(ただし、品数は少ない)、Bは子ども料理(一般的には、いわゆるファミレスなどにあるお子様プレートのような料理)、Cは食事はなし・就寝する環境のみ(ふとん、毛布、マットレスなど)でそれぞれの旅館により料金が変わってきます。
一般的な料金の算定方法としては、Aが大人料金の70%、Bが50%、Cが30%といったように料金が決まります。「食事もなし、就寝する環境も使わない」場合は、無料になる場合もありますし、施設使用料としていくらかかかる場合があります。
子どもの数え方は、旅館によって様々です。定員の計算上は1名と数えるところがあれば、0.5名で数えたりするところもあるので、定員の人数の定義は宿舎によって様々ですが、赤ちゃんとはいえ宿泊者の名簿にはしっかり記入する必要がありますので、後々になってトラブルを起こさないためにも、予約した時点では全員分の子どもの人数をしっかり伝えておきましょう。
宿泊料金の実際の内容
旅館の料金の内訳は大体わかりづらいことが多いので、実際の内容をすべて把握することは難しいかもしれませんが、宿泊予約サイトなどにある程度のイメージ画像、実際に宿泊した人のレビュー、泊まった時に撮った写真もインターネット上で調べてみるとでてくることもあるので、一度調べてみてみるとよいでしょう。
まとめ
旅館に泊まろうか検討している方々に役立つ基礎知識をあれこれ集めてご紹介しました。さらに役立つ情報や記事をどんどんとご紹介しますので、楽しみにしていてください。
こちらで説明したとおり、泊まってみたいと検討している旅館を実際に泊まった人の声・レビュー・撮った写真・動画などがあるといいでしょう。日本らしさを中心にして、古き良い文化を体験できるなど、私達の希望を叶えてくれる宿もあるでしょう。
まずはホームページなどで気軽に相談してみるといかがでしょうか。求めている素敵な宿になる可能性があるので、じっくりと検討しましょう。良い面も悪い面も話しをしてくれるところは信頼ができますね。それでは、思い出に残る旅館ステイをお楽しみください!